ふるさと納税のにAIを活用ー地域創生を促進
クライアント概要
自身の出身地や支援したい地方自治体への寄付を通じて、居住地に支払う住民税の一部が控除されたり、所得税から還付されたりする『ふるさと納税』制度は、導入から17年が経過しました。その自治体における寄付金の使い道に自らの意思を反映できることや、地域の魅力的な返礼品を受け取れることも特徴の一つです。
本制度は、地域の課題解決と新たな価値創造を促進し、地域経済の活性化を通じて都市部と地方の税収格差を是正することや、寄付者が税の使い道を考えるきっかけになること、そして、地域が自らの魅力を磨き、発信していくことを目的としています。
株式会社トラストバンク(以下、「トラストバンク」)が運営する「ふるさとチョイス」は、ふるさと納税の国内最大級プラットフォームとして、全国の9割を超える自治体と提携し、地域の名物である特産品から現地でのアクティビティチケット・宿泊券などの”体験型”、そして日用品に至るまで、76万点(2024年10月)を超える多彩な返礼品を提供しています。
課題
「ふるさとチョイス」は全国9割以上の自治体と契約し、ポータルサイトとして最大級である全国約76万点の地域ならではの返礼品を掲載していることが強みです。しかし、従来のスマートフォンアプリには課題がありました。
- アプリならではの利便性や楽しさを十分に提供できていない: ウェブサイトと同様の情報を提供するに留まってしまっており、アプリを利用するメリットを寄付者が感じられていない
- 返礼品選びの楽しさと地域課題の認知の両立: 寄付者が返礼品選びを楽しむことに終始し、ふるさと納税を通じて、知らなかった地域の情報や地域課題について、より深く知ることができる体験を提供できていない
- 返礼品の選択肢が狭まり、寄付受入額が人気自治体に集中する: 人気ランキングや知名度の高い返礼品に寄付が偏り、まだ知られていない地域の返礼品を寄付者が知る機会が少なく、寄付者にとっても新たな地域との出会いを楽しめていない
Recursiveのソリューション
トラストバンクとRecursiveは、ふるさと納税における寄付者の満足度と体験価値の向上を目指し、地域課題への認知促進や新たな地域との出会いを創出するため、パーソナライズされた返礼品を提案する「チョイスAI」の開発に着手しました。
トラストバンクのモバイルアプリにチャットボットとして搭載するチョイスAIは、フレンドリーな挨拶でユーザーとの対話を開始し、その人の好みを理解するための質問を投げかけます。その回答内容に加え、ユーザー属性(年齢、居住地など)、サイト内閲覧履歴、過去の寄付履歴といった内部データ、さらには祝日や季節トレンドなどの外部データを組み合わせ、高度なアルゴリズムで分析します。これにより、ユーザーの潜在的なニーズや興味関心を深く理解します。こうして得られた詳細なユーザープロファイルに基づき、チョイスAIは独自のレコメンデーションエンジンを駆使し、約100万点にも及ぶ豊富なデータベースから最適な返礼品を提案します。
さらに、Recursiveは協調フィルタリングを活用した高度な検索技術を実装することで、好みや行動が類似するユーザーデータをもとに、よりパーソナライズされた返礼品を推奨できるようにしました。
また、データのセキュリティとプライバシーを確保するため、Recursiveは個人情報保護など、関連する法律・ガイドラインに準拠した統括的な情報セキュリティポリシーを策定しました。チョイスAIは、通信経路やデータベースの暗号化、厳格なアクセス制御、脆弱性管理システムの導入、詳細なログ監査など、多層防御によるセキュリティ対策を実装しており、ユーザーの個人情報を厳重に保護します。

パフォーマンス評価
本格導入に先立ち、RecursiveはチョイスAIの性能を厳密に評価するため、LLM(大規模言語モデル)を活用した「模擬ユーザー」を開発し、実際の寄付者の行動をシミュレーションしました。この評価においては、寄付者の年齢、性別、出身地といった属性を考慮し、チョイスAIに対する要求レベルを以下の4段階に設定しました。
- 非常に容易: ユーザーは明確な目的意識を持ち、質問されずとも積極的に関連情報を提供する
- 容易~中程度: ユーザーは明確な目的意識を持つものの、質問されない限り関連情報を提供しない
- 中程度: ユーザーは具体的な目的意識を持たないものの、特定のイベントでの利用を想定。関連情報は質問されない限り提供しない
- 困難: ユーザーは具体的な目的意識を持たず、関連情報も質問されない限り提供しない。ただし、適切な提案があれば選択を促される可能性がある
評価の結果、チョイスAIは78%という高い正答率を達成し、週次・月次の人気商品に偏重した既存の推奨システムを大幅に凌駕する結果を実証しました。この結果は、チョイスAIがより高度で魅力的、かつパーソナライズされた推奨を提供することで、寄付者の体験向上に大きく貢献することを示唆しています。

成果
チョイス AIの導入によって「ふるさとチョイス」の機能が拡張され、寄付者の皆様はより快適に、ご自身のニーズに合った寄付先を見つけられる新しい体験が得られます。これにより、以下の成果を目指します。
- ふるさと納税の利用促進: 個々のユーザーに最適化された返礼品や寄付先の提案を通じて、ふるさと納税の利用を促進し、自治体における地域振興のための財源を拡充
- アプリのダウンロード数増加と活用率の向上: 魅力的な機能と体験の提供により、さらなる寄付者の参加とエンゲージメントを促進し高め、最終的に自治体への財政支援を強化。また、より便利で魅力的なアプリ体験を提供することで、既存ユーザーの利用頻度を高め、新規ユーザーの獲得を促進
- 寄付満足度の向上: パーソナライズされた情報提供とスムーズな寄付体験を通じて、寄付者の満足度を高め、継続的な利用を促進
お客様の声
「我々が目指す『自立した持続可能な地域』の実現において、Recursiveの先端AI技術を用いた協業は大きな推進力となります。まずは、ふるさとチョイスにおける寄付者の体験向上を図っていくとともに、自治体向け支援の領域なども視野に協業することで、持続可能な地域社会を築いてまいります。」
トラストバンク 代表取締役社長 川村憲一 氏のコメント